抄録
ネフロン癆は,小児期の末期腎不全(ESRD)の原因疾患の1 つである。本症の病態は,他の囊胞性腎疾患と同様,一次繊毛(primary cilia)の異常である。Primary ciliaは,非運動性の繊毛であり,腎を含め多くの組織や臓器に存在する。腎におけるprimary cilia は,尿細管のapical surface に存在する。その役割として,細胞内外のシグナル伝達や細胞周期,細胞骨格などに関与する。したがってprimary cilia の異常は,尿細管のみに留まらず,腎全体の構造的,機能的障害を引き起こす。責任遺伝子として現在までに13 個のNPHP 遺伝子が同定されているが,それらすべての遺伝子異常を含めても異常が判明する例は半数にも満たない。これまでESRD の進行時期の違いから,若年型,乳児型,思春期型に分類され,それぞれの責任遺伝子が同定されているが,最近では,3 つのタイプのネフロン癆とこれまでに同定されている責任遺伝子が必ずしも一致しない例も報告されるようになり,本症における遺伝子学的な複雑さがより増加している。