2018 年 31 巻 1 号 p. 57-62
Bevacizumab (BV) はvascular endothelial growth factor (VEGF)に対するモノクローナル抗体で,血管新生を阻害して抗腫瘍効果を発揮する分子標的薬である。代表的な有害事象に蛋白尿を認めるが,腎病理学的に検討されることは少ない。今回,視神経膠腫に対するBV 単剤治療中に蛋白尿が出現し,糸球体内皮細胞障害と巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis: FSGS)を認めた。BV 関連の腎組織所見は血栓性微小血管症が多くFSGS の報告は稀である。近年,健全な濾過障壁の維持にはVEGF を産生分泌するポドサイトと供給される内皮細胞のクロストーク機構が重要とされている。本症例は,BV による内皮細胞障害から係蹄構造が崩壊し,ポドサイト-内皮細胞VEGF 軸であるクロストーク機構が破綻してポドサイト障害を示すFSGS を認めた可能性が示唆された。