2018 年 31 巻 1 号 p. 12-20
近年の遺伝子解析技術の進歩,国家的・国際的患者レジストリーの普及により,遺伝性尿細管機能異常症という希少疾患においても,その遺伝学的,臨床的特徴の詳細が明らかにされつつある。例えば,Dent 病,Lowe 症候群では腎石灰化が腎不全の進展に寄与しないこと,Bartter 症候群III 型では変異の重症度と発症年齢が関連すること,Gitelman 症候群では変異の種類と性別がカリウム補充量に関連すること,遠位尿細管性アシドーシスでは乳幼児期発症例において,既知の3 遺伝子すべてが候補遺伝子になることなどが報告された。また,Fanconi症候群ではナトリウム,リンのトランスポーターであるNaPi-IIa やペルオキシソーム酵素が新たな責任分子として同定された。一方,各疾患において原因遺伝子が同定されていない例も多く,水電解質,酸塩基平衡に関わる既知の分子以外に,それらに影響を与える因子の存在が想定される。