日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
多剤併用療法前にステロイドパルス療法を施行した小児IgA 腎症の腎予後に関する検討
山田 拓司藤田 直也山川 聡後藤 芳充牛嶌 克実金原 有里上村 治
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2019 年 32 巻 1 号 p. 16-23

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抄録

近年小児IgA 腎症に対する多剤併用療法やACE 阻害薬などの導入により腎予後は大幅に改善してきたが,未だ予後不良例も存在する。今回我々は,巣状分節性活動性病変を有するびまん性メサンギウム増殖型IgA 腎症に対し,多剤併用療法前にステロイドパルス療法の初期治療を施行した小児28 例の腎予後に関する検討を行った。発見時からの経過観察期間は中央値8.3(6.3~8.8)年で,初回腎生検時年齢は10.5(7.7~12.3)歳,早朝尿蛋白/Cr 比0.79(0.3~1.7)g/gCr だった。経過観察中,一部の症例に扁桃摘出術やRAS 阻害薬を併用し,最終観察時の蛋白尿と血尿蛋白尿両者の消失率はそれぞれ85.7%と67.9%であった。蛋白尿残存例は全て最終尿蛋白/Cr 比が<0.5 g/gCr と軽微であり,腎機能障害例(eGFR<90 ml/min/1.73 m2)や高血圧合併例は存在せず,重篤な有害事象もみられなかった。巣状分節性活動性病変を有する小児IgA 腎症に対し,多剤併用療法前にステロイドパルス療法を施行し,その後の経過により適宜追加治療を行うことで長期予後が改善する可能性があると考えられた。

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© 2019 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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