2020 年 33 巻 1 号 p. 37-42
閉塞性異所開口尿管の著明な拡張は診断を困難にする場合がある.我々は尿うっ滞による尿路感染が発見の契機となり,異所性尿管瘤との鑑別に苦慮した閉塞性異所開口尿管の一例を経験した.症例は0 歳3 か月女児.不明熱の精査加療目的で当科入院し,上部尿路感染症と診断した.造影CT では両側重複腎盂尿管および左上腎尿管の蛇行/拡張所見を認め,膀胱内には造影効果のない囊胞性腫瘤を認めた.両側完全重複腎盂尿管および左上腎異所性尿管瘤と考え,経尿道的尿管瘤切開術を予定した.しかし術中膀胱鏡では膀胱内に囊胞性腫瘤を認めず,異所性尿管瘤は否定され,膀胱頸部近傍の尿道後壁に左上腎由来の尿管口を認めた.両側完全重複腎盂尿管および左上腎由来異所開口尿管と診断し,後日左上腎-左下腎尿管尿管吻合術を施行した.以後は尿路感染なく経過している.膀胱内囊胞性腫瘤を認めた際は閉塞性異所開口尿管を鑑別に加え,精査する必要がある.