2020 年 33 巻 1 号 p. 29-35
尿細管性アシドーシスは小児で低身長や体重増加不良を来すことが知られている.症例は7 か月の女児.体重増加不良のため当科に紹介され,アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスを認め精査入院となった.塩化アンモニウム負荷試験・重炭酸負荷試験の結果から,近位尿細管性アシドーシスと診断した.また症例は亜鉛欠乏症も呈しており,体重増加不良の原因は尿細管性アシドーシスと亜鉛欠乏症の合併が考えられた.また本症例の同胞2 人が低身長と潜在性亜鉛欠乏を認めた.症例には高アルカリ療法と亜鉛補充を,同胞2 人には亜鉛補充を開始した.尿細管性アシドーシスの遺伝子検査を行ったが,既知の遺伝子変異は認められなかった.体重増加不良の原因は複数の病態が原因となる場合もあり,単一の疾患が診断された後にも十分な複数疾患の鑑別を行うことが重要と考えられた.