2020 年 33 巻 2 号 p. 157-161
スルファメトキサゾール・トリメトプリム製剤(ST 合剤)は尿細管でのクレアチニン(Cr)分泌を阻害するため, クレアチニンクリアランス(Ccr)は低下する.症例は 9 歳女児.4 歳時に右副腎が原発の神経芽腫と診断され, 集学的治療が行われた.治療終了後,感染を繰り返すため,ST 合剤の予防内服をしていた.集学的治療の経過中に薬剤性の Fanconi 症候群を発症し,治療終了後に腎機能も低下してきた.Cr,シスタチン C, β2-ミクログロブリンに基づく推定糸球体濾過量に乖離があり,正確な腎機能を評価するため,イヌリンクリアランス(Cin)を行った.本来,糸球体濾過量は Ccr より低くなるが,2 時間Ccr とCin は各々,22.1 ml/分/1.73 m2 と近似する結果となった.ST 合剤を内服したことで尿細管での Cr 分泌が阻害され Ccr が低下したことにより Cin の値に近似したと考えられる.