2021 年 34 巻 1 号 p. 51-59
Bartter 症候群(BS)における急性腎障害(AKI)の報告は少ない.今回我々は AKI を来した III 型 BS の 1 例を経験した.1 歳 1 か月の女児,生後 9 か月時に偶発的に低 Na,低 K 血症,代謝性アルカローシス,成長障害を指摘され,尿細管機能異常症を疑われカリウム製剤とアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)の投与が行われていた.感冒時に低 K 血症等の電解質異常悪化のため入院を繰り返し,1 歳 1 か月時にはインフルエンザ感染に伴う経口摂取不良を契機に AKI と高 K 血症を来して入院し補液と電解質補正で改善した.AKI は腎前性と虚血性急性尿細管壊死によるものと判断した.その後の遺伝子検査で III 型 BS と確定診断された.従来 III 型 BS は古典型とされ新生児型と比較し軽症とされてきたが,BS は体液量減少のリスクが高く,感染症による経口摂取不良を来しやすい乳幼児期や ACE-I 投与中の患者では AKI に注意を要する.