2021 年 34 巻 1 号 p. 7-12
腎臓における局所のレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin 系:RA 系)は全身性の RA 系から独立して制御されており,血圧や体液量の調節だけでなく腎障害の病態機序に関与している.近年,尿中に排泄された RA 系の基質であるアンジオテンシノーゲンが腎臓内の RA 系活性化を反映する優れた指標であることが明らかとなりバイオマーカーとして利用されている.その臨床応用は高血圧以外に,小児では慢性腎炎患者の疾患活動性,さらには腎臓の発生や発達においても腎臓内のRA 系活性化を評価するために用いられている.さらにアンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme: ACE)のホモログである ACE2 や(プロ)レニン受容体による新たな経路の生理学的機序も見出されており,今後もさらに多くの病態機序の解明や疾患へのアプローチが期待できる.