2021 年 34 巻 1 号 p. 21-31
IgA 腎症は,小児期に発症しやすい代表的な慢性糸球体腎炎である.近年,その発症に IgA1 ヒンジ部の糖鎖不全が関与していることが判明した.これらの遺伝的背景がある中,抗原刺激により活性化された T 細胞や B 細胞により産生された IgA1 糖鎖不全免疫複合体が糸球体に沈着し,補体,マクロファージやメサンギウム細胞の活性化を介して炎症が惹起され,糸球体障害が進展する.自然経過あるいは治療によって尿所見が正常化するものから,蛋白尿の悪化,腎機能の低下を来して小児期に末期腎不全に至るものまで予後はさまざまであり,その重症度に応じた治療法が選択される.腎障害の進展を防ぐためには,これらの免疫応答を制御することが重要であり,重症例に対してはステロイド薬,免疫抑制薬やアンジオテンシン酵素合成阻害薬を併用した多剤併用療法が施行され,その結果,腎死例は減少し腎炎の長期予後の改善が認められている.今後は,小児が成長発達期であることをより考慮した,さらに副作用を最小限に抑えた治療法の開発が望まれる.