2021 年 34 巻 2 号 p. 109-114
ヒトの遺伝情報を解読し医療に応用することをゲノム医療と呼ぶ.かつて患者への遺伝子解析は主に研究として行われていたが,現在保険診療として行うための診療体制の整備が進められている.遺伝性腎疾患には Alport 症候群やネフロン癆,先天性腎尿路異常などさまざまな疾患が含まれる.腎疾患患者のゲノム情報を知ることはその患者の正確な診断だけでなく,予後の予測,合併腎外症状の診断,治療方針の決定,家系内再発率の推定, 特異的治療法の開発にもつながる.一方でゲノム医療を推進するための課題も多い.保険診療として解析できる遺伝性腎疾患はまだ少数であり,今後拡充を目指すことが重要である.ゲノムデータを適切に臨床に結び付けるための人材育成も必須である.腎疾患分野でのゲノム医療を推進するためには,今後腎臓専門医だけでなく臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー®,基礎研究者など幅広い分野での協力体制を構築する必要がある.