日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
ステロイド依存性ネフローゼ症侯群の経過を呈した小児SLE腎症
稲場 進大嶋 忠幸高橋 勉石原 俊二豊田 由紀黒瀬 京子高井 里香吉田 礼子樋口 晃岡田 敏夫谷澤 隆邦鈴木 好文
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1991 年 4 巻 1 号 p. 45-49

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抄録

 全身倦怠感,浮腫を主訴に発症し,特発性ネフローゼ症侯群の診断のもとにステロイド剤投与にて,初発及び頻回の再発時にも反応性が良好であったが,経過途中より顔面の蝶形紅斑,関節炎が出現したSLE腎症を経験した。初発時の腎生検所見では,光顕では約3割の糸球体係蹄壁にspike形成やpunched out像がみられたが,蛍光抗体法では,免疫グロブリン,補体,凝固因子すべて陰性であった。発症から6年後の2回目の腎生検では,約7割の糸球体係蹄壁に膜性変化がみられた。蛍光抗体法では,IgG,IgA,IgM,C3,C4,Clq,fibrinogen,properdinが糸球体係蹄壁に沿って穎粒状に陽性となった。電顕では,極く一部の基底膜上皮下に高電子密度沈着物が存在していた。
 経過中の尿蛋白分析像では,典型的なネフローゼパターンを呈しておらず,本症例は小児SLE腎症の発症形式としては,ぎわめてまれであると思われるが,その補助診断として尿蛋白分析も有用な検査法と考えられた。

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© 1991 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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