日本小児腎臓病学会雑誌
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4 巻, 1 号
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招待講演 I
招待講演 II
特別講演 I
  • 堺 秀人
    1991 年 4 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     IgA腎症は最初の報告(1)以来20年以上経過し,従来から本症の多発地域とされてきたアジア・太平洋諸国と南ヨーロッパ以外でも腎生検の普及に伴って症例数が増加し,現在では全世界でもっとも患者数が多い腎炎とみなされるようになった。しかも全症例の1~2割は徐々に末期腎不全へ移行し,腎移植後の再発例からも腎不全再移行例が報告されるようになったため,本症の成因解明とそれに基づいた根本的治療法の開発が世界的に強く要望されている。
     本症の発症がIgAを主体とする免疫複合体の腎糸球体沈着によるものであることは,現在ほぼ国際的にも合意が成立し異論は少ない。しかし本講演の目的は本症成因解明の最近の動向を報告するものであるため,このような免疫複合体起因論の根拠や1988年以前の知見については筆者の1989年度の総説(2)を参照されたい。以下の本稿では1989年以降に発表された知見に基づいて報告する。
特別講演 II
原著
  • 岩田 光良, 武市 幸子, 千原 克, 野々田 亨, 矢崎 雄彦
    1991 年 4 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     特発性ネフローゼ症侯群 (ネ症) の経過中に血栓症を併発した2例を経験したので報告する。症例1は11歳,男児。初期ステロイド剤 (ス剤) 治療に反応したが,以後ス剤抵抗性となり,ス剤投与後7ケ月で脳梗塞を併発した。症例2は18歳,男児。5歳発症のス剤依存性ネ症。経過中に再発性の下肢静脈血栓を併発したが,抗凝固療法にて軽快した。これら2症例の臨床経過と血栓症の成因について考察を加えた。
  • 上田 善彦, 岡 一雄, 金谷 洋明, 鷺谷 敦, 石飛 文雄, 滝本 寿郎, 小野 祐子, 鈴木 透理, 飯高 和成
    1991 年 4 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     片腎摘出例および片腎無形成例における分節状硬化の発症要因,とくに荷電障害,血管病変および傍髄部優位性 (vulnerability) を中心に検索を行った。
     検索には,光顕的に連続切片を作製し,腎皮質を3層に分けて各々検討した。
     片腎摘出例18例中5例に糸球体分節状硬化を認め,4例が男性であり,片腎摘出後期間の長いものに分節状硬化の出現頻度が高かった。また,片腎無形成例では,5例中2例に分節状硬化を認め,いずれも男性であった。血管病変では,片腎摘出例に小葉間動脈の高度な肥厚を認めたが,分節状硬化を有する症例に共通の特異的な病変は見い出せなかった。分節状硬化を呈する例では,非分節状硬化糸球体での陰性荷電障害もみられ,陰性荷電障害が分節状硬化に先行していると考えられた。片腎摘出例および片腎無形成例における分節状硬化の皮質3層の検索では,傍髄部優位性は認められなかった。
  • 新井 英夫, 関 裕介, 大木 康史, 丸山 健一, 冨澤 滋
    1991 年 4 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     尿路感染症を契機に発見された先天性尿管弁の1歳男児例を経験した。左水腎症が見られ,逆行性腎盂造影にて尿管のL3~L4の高さで狭窄を認めた。また,右側にII度のVURを合併していた。感染のコントロ一ルが困難であるため尿管皮膚痩の造設を予定して開腹したが,腎盂尿管移行部より遠位に硬い索状物が触知された。狭窄の範囲が予想より長く,強度の膿尿が持続していること,水腎症が高度であり腎機能回復は難しいと判断されたことより,左腎尿管摘除術が施行された。尿管の索状の部分の病理所見で平滑筋組織の肥厚が見られたため,先天性尿管弁と診断した。術後の経過は良好である。上部尿路通過障害の一因として本症を考慮することも重要であると思われる。
  • 門脇 純一, 星井 桜子, 安保 亘, 倉山 英昭, 宇田川 淳子, 水野 愛子, 乾 拓郎, 神谷 齋
    1991 年 4 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     学校検尿 (集団検尿) で発見され慢性腎不全 (CRF) に進行した症例につき,臨床的分析を行って報告した。国立療養所4施設にアンケート調査票を送付し依頼した。
     症例は総数で36例となり,男性は21例,女性は15例であった。
     原発性糸球体腎疾患はびまん性増殖性腎炎,IgA腎症,巣状糸球体硬化症,膜性増殖性腎炎Type1などが多く,それ以外の腎疾患では先天性腎疾患,続発性腎症,尿路感染症,蓄積症に続発した腎疾患が多いものであった。
     発見から6ヵ月以内にCRFに進行した症例は意外に多く28%に達していた。また発見時CRF診断時の年齢にも特徴があり思春期にピークがあった,現行の検査法では一部症例は発見が見逃されたり,遅延したりしてる可能性も否定できない反面,早期発見,治療により進行阻止・遅延を期待できる疾患もあり,その点で学校検尿の意義を確認した。
  • 松山 壮一郎, 鄭 輝男
    1991 年 4 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     チアノーゼ性先天性心疾患腎症の経過中に亜急性細菌性心内膜炎を合併し,それを契機に蛋白尿の著しい増悪を認め,チアノーゼ性先天性心疾患腎症に亜急性細菌性心内膜炎性腎炎を併発したと診断した12才7ヵ月の1男子例について報告した。腎生検上diffuseな糸球体の腫大に加えてsegmentalに高度の変化を認め,両疾患の合併の結果であると思われた。本症例のごとき合併例についての蛍光ならびに電顕所見を含んだ報告は見当たらない。
  • 谷澤 隆邦, 和田 博義, 島田 憲次, 生駒 文彦
    1991 年 4 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     腎盂尿管移行部狭窄による小児水腎症49症例 (50検体) を臨床病理学的に検討した。両側性: 9例,片側性: 40例である。合併症としてはVUR (vesicoureteral reflux) が5例,単腎例が4例に認められる。男女比は41 : 8,平均年齢は4.6±4.0歳 (1ヵ月~14歳) である。予後では末期腎不全に2例が進行し,蛋白尿が8例,高血圧が3例に認められる。単腎例4例中3例が追跡観察可能で,2例が末期腎不全へ進行し,生検時既に4例中3例が+4.8SD以上の糸球体肥大を認めた。両側性水腎症例で腎機能の良好な対側に糸球体肥大が認められる。術前と術後6ヵ月の経静脈性腎盂造影像で,改善群と不変或は悪化群を比較すると,後者では前者に比して生検時既に有意な糸球体肥大 (ボウマソ面積,p<0.02,糸球体係蹄面積,p<0.05) を認める。以上の結果から糸球体肥大が進行性増悪機序の一部に関与することが推測される。
  • 稲場 進, 大嶋 忠幸, 高橋 勉, 石原 俊二, 豊田 由紀, 黒瀬 京子, 高井 里香, 吉田 礼子, 樋口 晃, 岡田 敏夫, 谷澤 ...
    1991 年 4 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     全身倦怠感,浮腫を主訴に発症し,特発性ネフローゼ症侯群の診断のもとにステロイド剤投与にて,初発及び頻回の再発時にも反応性が良好であったが,経過途中より顔面の蝶形紅斑,関節炎が出現したSLE腎症を経験した。初発時の腎生検所見では,光顕では約3割の糸球体係蹄壁にspike形成やpunched out像がみられたが,蛍光抗体法では,免疫グロブリン,補体,凝固因子すべて陰性であった。発症から6年後の2回目の腎生検では,約7割の糸球体係蹄壁に膜性変化がみられた。蛍光抗体法では,IgG,IgA,IgM,C3,C4,Clq,fibrinogen,properdinが糸球体係蹄壁に沿って穎粒状に陽性となった。電顕では,極く一部の基底膜上皮下に高電子密度沈着物が存在していた。
     経過中の尿蛋白分析像では,典型的なネフローゼパターンを呈しておらず,本症例は小児SLE腎症の発症形式としては,ぎわめてまれであると思われるが,その補助診断として尿蛋白分析も有用な検査法と考えられた。
  • —抗アレルギー剤の腎炎発症予防効果について—
    田中 完, 佐々木 哲哉, 阿部 光右
    1991 年 4 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     昭和61年から平成2年までの5年間に盛岡赤十字病院小児科で経験したアレルギー性紫斑病17例を臨床的に検討した。17例中,腎炎を発症したものは5例,29%であった。腎炎発症群に一定の傾向はみられなかった。一方,紫斑病発症早期より抗アレルギー剤の投与を試みた群,11例と非投与群,6例とに分けた,2群間の比較検討では,腎炎発症率は前者で1例,0.09%,後者で4例,66%と前者で有意に低率であった (p<0.05)。また,抗アレルギー剤投与群で腎炎発症をみた1例においても臨床経過は良好であった。アレルギー性紫斑病において,その腎炎発症を予防する有効な治療法は未だ確立されておらず,また,抗アレルギー剤はこれまで重篤な副作用が報告されていないことから,投与を試みてみて良い治療法と考えられた。
  • 佐藤 敬, 渡辺 一志, 川崎 幸彦, 熊田 和夫, 渡辺 憲史, 川名 冬彦, 樋口 悦美, 神山 論, 鈴木 順造, 弓削田 英知, 加 ...
    1991 年 4 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     腎組織像において興味ある所見を呈した2才1か月時発症のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群 (NS) 例を経験した。巣状分節状糸球体硬化 (FSGS) の組織像を呈し,核・胞体比の高い上皮細胞の外方配列を示す未熟糸球体を伴っていた。しかもその未熟糸球体はすべて硬化像を呈する糸球体にのみ認められた。また自験例の浮腫管理に際しては,アルブミン補充などの保存的治療だけでは限界があったので,持続的携帯腹膜透析法 (CAPD) を実施し著効を得た。
  • 島田 憲次, 田口 恵造, 生駒 文彦
    1991 年 4 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     膀胱尿管逆流 (VUR) に対する逆流防止術が腎実質障害に対しいかなる効果を及ぼすかを知る目的で,過去約16年間に手術が加えられた小児原発性VUR 361例601尿管を検討した。逆流防止術の成功率は95%で,術後の尿路感染の発症は著明に減少していた。
     scarの進展は15%の腎にみられたが,手術前および術後2年以内の期間に11%の腎でscar進展がみられており,術後2年以降は手術合併症のない症例ではその頻度は2%と減少していた。正常の腎成長を示していた腎が,術後に成長が遅れsmall kidneyとなったのは3%,反対に腎成長が回復しsmall kidneyが正常腎長となったのは例外的で1%のみであった。腎機能障害を示した26例中,CCrがすでに20~40ml/minの症例では,手術による腎機能の回復は認められなかった。逆流防止術の適応に際しては,このような手術による効果と限界を熟知しておく必要がある。
  • Yoshio Ishikawa, Hiroshi Kawaguchi, Katsuimi Itoh
    1991 年 4 巻 1 号 p. 67-75
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     In order to evaluate the hemostatic disturbance of uremic children, twenty-two patients undergoing hemodialysis were investigated for their platelet aggregation faculty, the amount of malondialdehyde (MDA) generated from washed platelets, a by-product of arachidonic acid cascade of metabolism to form thromboxane A2 (TxA2) and the capacity of uremic plasma to stimulate the production of prostacyclin (PGI2) activity from a rabbit exhausted aortic ring. Platelet aggregation responding to lower concentrations of ADP was enhanced in uremic children as compared with the controls. On the contrary, it was depressed when induced by arachidonic acid (AA) . The amount of MDA generated from washed platelets of patients was significantly reduced. The plasma of patients produced more PGI2 activity from a rabbit aortic ring than that of controls. These results suggested that in uremic children, platelet aggregation pathway is intrinsically disturbed but uremic plasma contains several unknown factors which modulate ADP induced aggregation and PGI2 production to which paradoxical episodes of thrombotic and hemorrhagic complications might be attributable.
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