抄録
膀胱尿管逆流 (VUR) に対する逆流防止術が腎実質障害に対しいかなる効果を及ぼすかを知る目的で,過去約16年間に手術が加えられた小児原発性VUR 361例601尿管を検討した。逆流防止術の成功率は95%で,術後の尿路感染の発症は著明に減少していた。
scarの進展は15%の腎にみられたが,手術前および術後2年以内の期間に11%の腎でscar進展がみられており,術後2年以降は手術合併症のない症例ではその頻度は2%と減少していた。正常の腎成長を示していた腎が,術後に成長が遅れsmall kidneyとなったのは3%,反対に腎成長が回復しsmall kidneyが正常腎長となったのは例外的で1%のみであった。腎機能障害を示した26例中,CCrがすでに20~40ml/minの症例では,手術による腎機能の回復は認められなかった。逆流防止術の適応に際しては,このような手術による効果と限界を熟知しておく必要がある。