抄録
小児細菌性肺炎の診断は, 抗菌薬投与の必要性, 選択を考えるうえで重要である。わが国においては, 血液培養陽性となる肺炎症例は少なく, 細菌性肺炎の診断には, 気道からの培養を併用する必要がある。その中で洗浄痰培養は, 他の気道からの培養と比較した場合, 最も下気道の起炎菌を反映する培養方法である。なお, 洗浄痰培養の際にグラム染色鏡検検査を併用することにより, 得られた検体が下気道由来かどうかの評価と, 起炎菌の推定迅速診断が可能となる。また, 洗浄痰培養結果と抗菌薬治療効果はよく相関するため, 経時的な痰の検査は肺炎の治療効果判定に利用できる。さらに, 痰検査は細菌性肺炎の診断以外にも, ウイルス感染やアルルギー疾患の鑑別にも利用できる。以上のように, 痰検査は肺炎の病原診断として有用であり, 積極的に取り入れていくことで, わが国の小児肺炎の実態がより明らかになることが期待される。