日本小児呼吸器疾患学会雑誌
Online ISSN : 2185-3754
Print ISSN : 0918-3876
ISSN-L : 0918-3876
総説
吸入療法の基礎
藤村 直樹
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 19 巻 1 号 p. 54-59

詳細
抄録
1)吸入療法の歴史:古代より, 呼吸器疾患の治療には, 吸入療法が用いられてきた。古代インド, 中国, アステカでは曼茶羅華, ベラドンナ, 麻黄などを煙として吸引した。2)吸入ディバイスの進歩:1930年代になるとネブライザーなどがつぎつぎと作られ, 携帯に便利な定量噴霧吸入と, ドライパウダー吸入が開発された。その後, HFAを噴射剤としたキュバールTMの開発で, エアゾールの微粒子化と高い薬剤肺内送達をもたらした。またレスピマットの開発も重要である。3)吸入されたエアゾール粒子の気道内運搬と沈着は,(1)慣性衝突,(2)沈降,(3)拡散により行われる。4)吸入された薬剤エアゾールは,(1)粒子径,(2)粒子密度,(3)吸気時間/気道内滞在時間,(4)吸気流速, が影響を与える。5)エアゾール粒子径と肺内の粒子沈着分布:粒子径∅=3μmは中枢気道に, ∅=3-2μmは中間気道まで, ∅≤2μmは末梢気道までの送達, 沈着が可能となる。6)吸入ディバイスは,(1)エアゾール噴射と吸入の同期,(2)薬剤上気道沈着,(3)エアゾール噴射時間などの特性を持ち, 利点にも欠点にもなっている。今後もより理想的な薬剤エアゾールと吸入治療の進歩が期待される。
著者関連情報
© 日本小児呼吸器疾患学会
前の記事 次の記事
feedback
Top