2017 年 35 巻 3 号 p. 217-227
本研究では参加者の感情状態の個人差を小さくするために参加者と刺激の関係性を統制し,感情状態がN400およびP600振幅に影響するのかを検討した。具体的には犬が好きかつ犬の飼育経験を有する者のみを参加者とし,犬に関連する動画を呈示した。参加者24名のうち半数はポジティブ動画を(ポジティブ群),残りの半数はネガティブ動画を呈示され(ネガティブ群),その後参加者に日本語文判断課題を課した。意味逸脱に対するN400振幅は両群で確認されたが,ポジティブ群のN400振幅の方がネガティブ群のそれより大きかった。正文と統語逸脱に対するP600振幅の違いはポジティブ群でのみ確認された。また感情状態はヒット率と反応時間に影響を及ぼさなかった。これらの結果は文処理が感情の影響を受けることを示している。さらに参加者の感情状態の個人差を小さくする様な工夫を行うことが,この様な影響を明確にするのに重要であることを示した。