2020 年 38 巻 1 号 p. 12-20
時間知覚課題の1つであるピーク法は海馬と線条体の働きが大きいと考えられている。本研究は海馬に多く分布するN-methyl-d-aspartate(NMDA)受容体に着目し,その競合拮抗薬であるd, l-2-amino-5-phosphonopentanoic acid(AP5)がピーク法における時間知覚に与える影響を調べることを目的とした。全ての被験体は30秒のピーク法課題で学習基準を達成した後,AP5を灰白層に投与してその影響を観察した。AP5は反応分布の右シフトを引き起こし,時間を過大評価させた。本研究の結果は灰白層周辺のNMDA受容体がピーク法における時間知覚に影響を及ぼしていることを示唆するものであった。したがって,本研究は時間知覚におけるNMDA受容体の役割を示唆するだろう。