生理心理学と精神生理学
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38 巻, 1 号
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巻頭言
短報
  • 森寺 亜伊子, 榛葉 俊一, 吉井 光信, 井上 真澄, 東 華岳, 坂 徳子, 久保 浩明, 麦島 剛
    2020 年 38 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/03/19
    [早期公開] 公開日: 2020/12/10
    ジャーナル フリー

    不注意は注意欠如・多動症(ADHD)の主症状の一つであり,ADHD児はprepulse inhibition (PPI)の弱小化やP50抑制の弱小化を示し,このことより感覚運動ゲーティングおよび感覚ゲーティングの不全が示唆される。ADHDの動物モデルとして用いられる自然発症高血圧ラット(spontaneously hypertensive rat: SHR)が多動性を示すことと注意の不全に関連するPPI減弱を示すことが報告されてきた。我々はSHRの感覚ゲーティングを検討するため,大脳皮質における事象関連電位を記録した。その結果,対照系統に比べてSHRのP50抑制様反応は有意な減弱を示さなかった。一方で,SHRは対照系統に比べて1 ms毎の電圧変化の増減に有意な変化を示した。これはSHRのゲーティングの特性を示唆するかもしれない。感覚ゲーティングを振幅変化としてだけでなく時間的な波形変化として捉えることにも意義があると考えられる。

原著
  • 尾﨑 大輝, 服部 稔, 坂田 省吾
    2020 年 38 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/03/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー

    時間知覚課題の1つであるピーク法は海馬と線条体の働きが大きいと考えられている。本研究は海馬に多く分布するN-methyl-d-aspartate(NMDA)受容体に着目し,その競合拮抗薬であるd, l-2-amino-5-phosphonopentanoic acid(AP5)がピーク法における時間知覚に与える影響を調べることを目的とした。全ての被験体は30秒のピーク法課題で学習基準を達成した後,AP5を灰白層に投与してその影響を観察した。AP5は反応分布の右シフトを引き起こし,時間を過大評価させた。本研究の結果は灰白層周辺のNMDA受容体がピーク法における時間知覚に影響を及ぼしていることを示唆するものであった。したがって,本研究は時間知覚におけるNMDA受容体の役割を示唆するだろう。

  • 劉 星志, 畑 敏道
    2020 年 38 巻 1 号 p. 21-33
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/03/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,ラットの内側前頭前野(medial prefrontal cortex, mPFC)におけるドーパミンD1受容体(D1DR)阻害薬SCH23390の局所投与がインターバルタイミング(以下,タイミング)に与える効果について検討した。特定の時間範囲内に生じるオペラント反応を餌で選択的に強化するピークインターバル手続きを用いて,タイミングの変動性と一致度を評価した。統制条件(0.0 µg)に比べ0.5 µg条件では,試行内反応率が影響を受けなかったにもかかわらず,標準化された反応率分布が平坦化し, DI値(変動性の指標)が低下した。それに対して1.5 µg条件では,標準化された反応率分布もDI値もほとんど変化しなかったが,試行内での反応率が低下した。タイミングを求めない別の課題においても,反応率の低下が生じることを確認した。一方,タイミングの一致度が用量間で異なることを示す証拠は得られなかった。以上のことから,mPFCのD1DRに対する抑制は一致度でなく,変動性を悪化させる効果があることが明らかにされた。

評論
  • 林 朋広, 佐藤 暢哉
    2020 年 38 巻 1 号 p. 34-47
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/03/19
    [早期公開] 公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    脳梁膨大後部皮質は,脳梁の周囲に位置する頭頂葉内側部の最も尾側の領域である。ヒトにおける脳梁膨大後部皮質はナビゲーションやエピソード記憶など様々な認知機能に関わる領域と考えられている。げっ歯類においては,脳梁膨大後部皮質は空間処理に重要な他の脳領域と神経連絡を有している。これまでに,様々な空間課題を用いて脳梁膨大後部皮質の空間処理における機能が検討されてきた。本論文では,ラットの脳梁膨大後部皮質の損傷研究に焦点を当て,その空間課題における役割をレビューし,その機能について議論する。レビューを通して,脳梁膨大後部皮質が,空間記憶や,環境中心的な手がかりの利用,課題解決に必要な空間手がかりの統合や切り替えに関わることを示唆する。

  • 小澤 貴明
    2020 年 38 巻 1 号 p. 48-58
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2021/03/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー

    光遺伝学(オプトジェネティクス)は近年,神経科学分野において非常に注目を集めている実験技術であり,自由行動中の動物の脳内に光を照射することで目的の神経細胞集団および神経投射経路に限局した人工的な神経活動操作をミリ秒単位の時間分解能で行うことができる。本稿では,(1)光遺伝学において重要な役割を果たす光感受性チャネル・ポンプの仕組み,(2)およびこれらを標的脳領域に発現させ,特定の神経細胞集団や神経回路を活性化/不活性化する方法について紹介する。また,光遺伝学を用いて具体的に明らかになった最新の知見について,特に計算論的神経科学の研究に焦点を当てながら紹介する。

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