生理心理学と精神生理学
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原著
視線パターンからみた聴覚障害児における指文字の読み取り方略
田原 敬渡辺 みさき井口 亜希子勝二 博亮
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2023 年 41 巻 2 号 p. 132-140

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抄録

本研究では,聴覚障害児を対象に指文字と口形を併用した状況下での指文字単語の読み取り課題を実施し,課題中の視線を計測することで,指文字単語の読み取り方略を検討した。また,指文字の呈示位置と口との距離及び単語の意味性を操作することで視線パターンに変化がみられるのかという点も併せて検討した。その結果,口と離れた位置で指文字が呈示された条件下では,視線が手指に集中することが明らかとなった。一方で,指文字が口に近い位置で呈示される条件下では手指と顔を同程度の割合で注視する特徴がみられ,手指と口形等の非手指情報に適宜視線を移動させ,複数の手がかりを統合しながら指文字を読み取っていると考えられた。さらに,同条件下では,障害の程度が重いほど顔をよく注視する傾向が明らかとなった。聴力レベルの高い対象者は,周辺視にて手指情報を捉えることが可能であるとされるため,中心視にて口形などの非手指情報を捉えつつ,周辺視にて指文字を識別するという方略を用いたと推察された。

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© 2023 日本生理心理学会
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