論文ID: 2408oa
日中の眠気を正しく評価し解釈することは睡眠問題の予防や心身の健康維持という観点からも極めて重要であり,健常から疾患レベルまでその特徴を包括的に把握する必要がある。本研究では眠気の主観指標と客観指標を併用し,過眠症患者を含む若年成人の日中の眠気について検討した。睡眠検査を行った成人男女42名で,内訳は健常対照群(HC)が19名,特発性過眠症群(IH)が13名,ナルコレプシー群(NA)が10名であった。HC群においては主観的眠気尺度である日本語版エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale : JESS)得点が病的とされる11点以上の者は分析から除外した。終夜睡眠ポリグラフィにつづいて翌日に反復睡眠潜時検査(Multiple Sleep Latency Test:以下,MSLT)を実施し,各napの直前に日本語版カロリンスカ眠気尺度(Japanese version of Karolinska Sleepiness Scale: KSS-J)を測定した。HC群はMSLTの平均入眠潜時が8分以上だった者をLow sleep propensity(Low SP, n = 8),8分未満だった者をhigh sleep propensity(High SP, n = 11)と2群に分けた。Low SP群のMSLTの平均入眠潜時は他群より有意に長かった。KSS-JとMSLTの結果が有意な相関を示すことは限定的で,関係性は群によって異なっていた。主観的な指標では把握しきれない強い眠気を持つ者が比較的多く存在し,彼らは自覚することなく重度の睡眠不足であった可能性が高く,その眠気の強さはIHやNAに匹敵するレベルであることが示された。