抄録
本研究の目的は, 片側大脳損傷が聴性中間潜時反応 (MLR) に及ぼす影響を調べることである.脳血管障害による側頭葉あるいは皮質下損傷をもつ5人の被検者は, 純音聴力検査やABR検査において正常であるが, 両耳分離聴検査においてはearextinctionを示す者であった.電気的活動は, 頭部冠状平面における3つの頭皮上電極部位, Cz, C6 (T4とC4の中点), C5 (T3とC3の中点) から記録した.刺激音は, 1秒に2回の90dBpeSPLのクリックとした.記録中, 被検者はベッド上で安静覚醒状態とした.誘発反応は, 200msの掃引時間で700回の平均加算を行った.MLRの記録から, Paは非損傷側で最大振幅を持ち, 損傷側で消失した.これらの結果は, Paの発生源が両側頭葉付近に存在する垂直方向の双極子であるという仮説を支持するものであった.