生理心理学と精神生理学
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健康成人における終夜睡眠中の中途覚醒
-脳波的覚醒と行動的覚醒との対応-
保野 孝弘松中 久美子宮田 洋広重 佳治
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1991 年 9 巻 1 号 p. 1-13

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抄録
ヒトの終夜睡眠中の脳波的覚醒 (α波の出現) と行動的覚醒 (ボタン押し応答) との対応関係を調べた.大学生 (男子5名;女子5名) を対象に, 6夜連続の終夜睡眠ポリグラフ記録を実施した.被験者は, 睡眠中に覚醒したと気づいた時はいつでも, できる限り早く, 押しボタンを4回押すよう教示された (BSA).その結果は, 以下の通りである. (1) 全脳波的覚醒 (206件) 中, 121件 (59.8%) にボタン押し応答は観察されなかった, (2) この脳波的覚醒と行動的覚醒との不一致は, 実験第1夜で最も大きく, 睡眠周期が経過するに伴い小さくなる傾向が認められた, また, (3) ポリグラフ記録上に観察されたBSA度数と朝の自己評価数とに有意な高い相関が認められた.これらの結果は, α波の出現は, 「覚醒した」という主観的意識体験を必ずしも反映しないこと, 実験室順応や睡眠の時間的経過が, 睡眠中の中途覚醒の主観的意識体験に影響を及ぼすことを示す.また, 脳波を指標として中途覚醒を定義することに問題が残る.
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© 日本生理心理学会
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