生理心理学と精神生理学
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9 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • -脳波的覚醒と行動的覚醒との対応-
    保野 孝弘, 松中 久美子, 宮田 洋, 広重 佳治
    1991 年 9 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    ヒトの終夜睡眠中の脳波的覚醒 (α波の出現) と行動的覚醒 (ボタン押し応答) との対応関係を調べた.大学生 (男子5名;女子5名) を対象に, 6夜連続の終夜睡眠ポリグラフ記録を実施した.被験者は, 睡眠中に覚醒したと気づいた時はいつでも, できる限り早く, 押しボタンを4回押すよう教示された (BSA).その結果は, 以下の通りである. (1) 全脳波的覚醒 (206件) 中, 121件 (59.8%) にボタン押し応答は観察されなかった, (2) この脳波的覚醒と行動的覚醒との不一致は, 実験第1夜で最も大きく, 睡眠周期が経過するに伴い小さくなる傾向が認められた, また, (3) ポリグラフ記録上に観察されたBSA度数と朝の自己評価数とに有意な高い相関が認められた.これらの結果は, α波の出現は, 「覚醒した」という主観的意識体験を必ずしも反映しないこと, 実験室順応や睡眠の時間的経過が, 睡眠中の中途覚醒の主観的意識体験に影響を及ぼすことを示す.また, 脳波を指標として中途覚醒を定義することに問題が残る.
  • 椎原 康史, 高橋 滋, 宮本 正典, 児玉 昌久
    1991 年 9 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究では月経前後の皮膚電位水準 (SPL) の変動を検討した.被験者は月経前緊張症を認めない52名の未婚の学生で, 月経開始前7日以内, 月経時, 月経終了後で月経開始後10日以内の各時期に計3回の実験を行った.実験は安静セッション (10分) および音刺激セッション (20分) から構成され, 音刺激は両耳からヘッドフォンによりトーンバーストとして提示された.SPLは左手掌母指球から導出した. SPLは月経開始前7日から4日前まで次第に上昇し, 月経開始までは陰性に高い電位 (月経前SPLとする) を保った.月経開始とともに低下し, 月経開始後4-10日ではほぼ一定の低い電位 (月経後SPLとする) を保った.実験の順序効果に関しては, 月経後のSPLでは, 1回目のSPLは2回目, 3回目のSPLに比較して陰性に高くなっていたが, 月経前SPLでは実験の順序による差は認められず, 月経前期における慣れの乏しさが推測された.実験の順序効果を考慮し, 1回目のSPLを除外し, 2回目および3回目のSPLをあわせて, 月経前SPLと月経後SPLを比較した.安静時および音刺激にいずれにおいても, 月経前SPLは有意に陰性に高くなっており, 月経前における自律神経系の過覚醒状態が示された.
  • 篠田 伸夫
    1991 年 9 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    CNVは初期成分 (O波 : orineting response) と後期成分 (E波 : expectancy) からなる.本研究は, (1) これら二成分の数理モデルを構築し, (2) 時間弁別課題下のCNVに適用することを目的とした.O波は, ボアソン過程の確率密度関数とした.自然界の減衰過程はこのような減衰関数で表現される.しかし, 期待 (本実験ではカウンティソグによる時間弁別) は目標指向過程と考えられるので, E波のモデルとしては, O波モデルの時間軸を逆転した「逆ポアソン過程関数」を採用した.課題に熟練した1名の被験者のCzより脳波を導出した.実験課題は, テスト刺激の時間間隔が標準刺激と同じかどうかを弁別することであった.標準刺激 (CUE) は, 800ms間隔の5音, テスト刺激は2音で, 時間間隔は2400 (T-), 3200 (TZ), 4000ms (T+) の3種類とした.運動反応は, 時間弁別時点から2s後になされた.加算平均からモデルを減算した波形は, CUE, TZ, T+条件では, 周期が約800msの成分が観察され, カウンティング成分であることが示唆された.モデルを決定するパラメータ数は, O波が1個, E波で2個である可能性が示唆され, これらのパラメータを推測する外部要因について考察が行われた.
  • 吉田 茂
    1991 年 9 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究は二重光刺激に対する視覚誘発電位 (ダブルVEP) に対して, 二元過程モデル (吉田, 1990a) を適用したものである.視角で2.と5.の小円形の光刺激を, 3つのコントラスト・レベル (1.0, 2.2, 3.4) で提示した.10ms幅のパルス光を, 50,100,200msの刺激間隔で2回与えて二重光刺激とした.後頭中心部 (Oz) からの典型的なVEPを分析した.簡略化した単一パルスVEPモデルは, オン成分のみからなり, オフ成分は含まないと仮定した.VEPモデルのパラメータは, フレッチャー・パウェル法と重回帰法によって決定した.合成されたモデル波形は原ダブルVEPとよく適合しており, 第2VEPの振幅は全刺激間隔条件でほぼ同じであった.単発VEPの興奮成分にもとづいた二重光の理論弁別曲線は, 心理物理的弁別曲線と同様な, 刺激の大きさ, コントラストの効果を示した.また, ここで用いた簡略化したパルスVEPモデルは人間の視覚系の解析に有用であると考えられる.
  • 梅沢 章男
    1991 年 9 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 1991年
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究はストレス刺激として広く利用されている暗算, ストレスフィルム, 冷刺激が呼吸活動に及ぼす影響を検討し, これらのストレス刺激に対して安定した変化を示す呼吸測度を見出すことを目的とした.本研究で分析した呼吸測度は1) 呼吸時間, 2) 吸気時間, 3) 呼気時間, 4) 呼気後ポーズ時間, 5) 吸気量, 6) 呼気量, 7) 分時換気量であり, ポーズ時間は呼気の流速が100ml/秒以下に低下している時間を測定した.健常な男子大学生20名が暗算, ストレスフィルム, 冷刺激のセッションを固定した順序で経験した.すべてのセッションは1回のストレス刺激と1-2回の非ストレス刺激 (中性刺激) から構成された.データ分析の結果, すべてのストレス刺激に対して安定した変化を示す呼吸測度は分時換気量とポーズ時間であった.ストレス刺激および中性刺激に対して分時換気量は有意な増加を, ポーズ時間は有意な短縮を示した.これらふたつの呼吸測度は微弱な心理的刺激に対しても敏感に変化することから, リラクセィション反応の測定に有効性を発揮すると期待された.
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