日本補綴歯科学会雑誌
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原著論文
1液性セラミックプライマーの保管が接着強さに及ぼす影響
後藤 治彦
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2008 年 52 巻 2 号 p. 107-116

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抄録

目的 : 市販1液性セラミックプライマーの保管安定性を明らかにするため, γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン (γ-MPTS) と90%エタノール水溶液からなる1液性試作プライマーを調製し, プライマーの保管がγ-MPTSの加水分解・縮合挙動に及ぼす影響, さらに縮合反応が接着強さに及ぼす影響について検討を行った.
方法 : 購入直後, 20カ月室温保管したラミナボンドポーセレンプライマー, 20℃恒温室に保管した試作プライマーにてセラミックを処理し, セメントを接着した試験体について, せん断接着強さの測定を行った. さらに, プライマーの保管期間がγ-MPTSの加水分解・縮合挙動に及ぼす影響をNMR法により解析した.
結果 : ラミナボンドを20カ月保管すると, 購入直後約26MPaを示した接着強さが約11MPaに低下した. 試作プライマーではγ-MPTS分子種の2量体が生成された時, 最大接着強さ約30MPaを示し, その後約16MPaに低下した. 保管期間が長くなるにつれ, γ-MPTS分子種の分子量が増大し, γ-MPTSの縮合反応により生成されたγ-MPTSの分子種が接着強さに影響を与えた.
結論 : ラミナボンドは20カ月保管すると, γ-MPTSのメトキシ基が希釈剤として用いられているエタノールとエステル交換反応を起こし, セラミック表面のシラン処理効果が低下し, せん断接着強さの低下を引き起こすことが示唆された.

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© 2008 社団法人日本補綴歯科学会
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