日本補綴歯科学会雑誌
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熱サイクル負荷が前装用硬質レジンの表面性状に与える影響
村口 浩一南 弘之倉茂 尚徳木村 孝広嶺崎 良人鬼塚 雅田中 卓男
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2002 年 46 巻 2 号 p. 251-259

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抄録

目的: 硬質レジン前装冠は, 審美的修復物として臨床においてしばしば用いられている. 接着技法の進歩により, 前装部レジンが金属フレームから脱落することを経験する機会は減少している. しかし, それに伴い, 装着後長期間経過すると, 変色や光沢の消失など前装部レジンの劣化が認められ, 審美性の低下が引き起こされる. 熱サイクル負荷は, 前装用硬質レジンの劣化を引き起こす原因の1つと考えられるが, その影響は解明されていない. 本研究では, 熱サイクル負荷が, 前装用硬質レジンの表面性状に与える影響について検討を行った.
方法: 4種類の光重合型の前装材料を用いて, 正方形 (8×8×1.5mm) の試験片を作製し, 測定面は臨床での技法に準じて研磨した. 4°Cと60°Cの水中に60秒ずつ浸漬する熱サイクル負荷を最大で50, 000回付与した後に, 肉眼的観察や色素浸透試験, 表面粗さの測定, 走査型電子顕微鏡 (SEM) による微細構造の観察を行った.
結果: 熱サイクル負荷後の試験片では, 肉眼的には粗造感と光沢の消失が認められ, 色素浸透試験による色素の浸透は増大した. また, 表面粗さは負荷前に比較して増加した. さらに, SEM観察では, クラックや陥凹の発生が認められた.
結論: これらのことから, 熱サイクル負荷は, 硬質レジンの表面性状に多くの変化を引き起こし, 審美性を低下させる要因であることが明らかとなった.

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