日本補綴歯科学会雑誌
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長期浸漬試験において浸漬溶液のpHが接着耐久性に及ぼす影響
倉茂 尚徳
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2002 年 46 巻 2 号 p. 241-250

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抄録

目的: 接着耐久性をin vitroで検討する長期浸漬試験は蒸留水中で行われてきた. しかし, 口腔内のpH値は, 2.3-8.0まで変化するとされている. そこで, 口腔内pHの上下限値と同じpHの溶液中で浸漬試験を実施して, 蒸留水浸漬の場合との接着耐久性の違いを検討した.
方法: 3種類の歯科用合金および歯科用陶材を被着体として, 接着試験片を作製した. これらをpH2.3の乳酸水溶液, pH8.0の炭酸水素ナトリウム水溶液およびpH6.0の蒸留水の3種類の浸漬液に最長で36カ月まで浸漬した. 浸漬終了後, 剪断接着強さを測定した.
結果: 金銀パラジウム合金およびCo-Cr合金をスーパーボンドC&Bで接着した場合には, 蒸留水 (pH6.0) 浸漬において接着強さの著しい低下を生じた. 金銀パラジウム合金およびNi-Cr合金をパナビア・フルオロセメントで接着した場合には, 乳酸水溶液 (pH2.3) 浸漬において接着強さが著明に低下した. また, 被着体が陶材の場合には, すべての接着強さ測定において陶材の凝集破壊が生じたため, 接着耐久性の検討は行えなかった.
結論: 歯科用合金, 接着用表面処理が異なっても, 接着性レジンおよび浸漬液のpHが同じであれば, 接着耐久性には類似した傾向が認められた.

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