日本補綴歯科学会雑誌
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人歯歯冠象牙質および歯根象牙質と各種レジンセメントとの接着性について
増田 美樹子早川 徹渡辺 官五十嵐 郁高橋 徹也北川 剛至會田 雅啓
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2002 年 46 巻 2 号 p. 260-269

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抄録

目的: 日常の臨床において歯冠補綴物の脱離がみられるが, そのほとんどがポストを有する鋳造築造体からの脱離である. 原因については, ポストの形態や応力分布など力学的観点からの究明が多い. 接着性からの検討も行われているがわずかであり, 歯冠象牙質を対象としているのが現状である. そこで今回は, 築造体の脱離の原因を歯根象牙質とレジンセメントとの接着性から究明するため, その第一歩として歯冠および歯根象牙質に対するレジンセメントとの接着性について検討を行った.
方法: 被着体は, 抜歯直後冷凍保存した人歯を使用直前に自然解凍し, #1000の耐水紙にて露出させた歯冠および歯根象牙質を用いた. 歯冠および歯根象牙質に対する4種の市販レジンセメントとの接着性, 前処理材処理後およびレジンセメント接着後のレジンタグの状態を電子顕微鏡によって観察を行った.
結果: 4種のレジンセメントのすべてにおいて, 歯冠象牙質に対する接着性が歯根象牙質に対する接着性より高かった. また, 前処理材によるスメア層の除去効果は歯冠において顕著であった. さらに, 歯冠象牙質において長いレジンタグが存在していることが確認できた.
結論: 歯根象牙質におけるスメア層の処理効果を歯冠象牙質と同程度に行うことが, 歯根象牙質に対するレジンセメントの接着性を高める一因となりうることが示唆された.

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