日本補綴歯科学会雑誌
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各種浸漬媒体中におけるティッシュコンディショナーからのフタル酸エステルの溶出挙動
川口 稔高橋 裕宮崎 光治
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2004 年 48 巻 3 号 p. 404-412

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抄録

目的: ティッシュコンディショナーに含まれる可塑剤成分 (フタル酸エステル) の溶出, 摂取動態を明らかにする目的で, 市販ティッシュコンディショナーを蒸留水, エタノール水溶液 (5%, 10%) 中に浸漬して, フタル酸エステルの溶出量を測定した.
方法: ディスク状試験片 (n=6) を各浸漬液に浸漬し, 1, 3, 5, 7および14日後に浸漬液中に溶出したフタル酸エステルを高速液体クロマトグラフィーを用いて定量分析した. そして各浸潰媒体中での溶出挙動から, 溶出量に及ぼす浸漬媒体の影響について検討した.
結果: 3種のフタル酸エステル (フタル酸ジブチル: DBP, ブチルフタリルグリコール酸ブチル: BPBG, フタル酸ベンジルブチル: BBP) の溶出量は蒸留水中よりもエタノール水溶液中で増加し, 14日間浸漬後の総溶出量は10%エタノール水溶液中で蒸留水中のおよそ1.7~2.3倍の値を示した. いずれのフタル酸エステルも溶出量は浸漬期間を通じて経時的に増加したが, 溶出量はその化学構造に依存しており, 分子中に芳香環を含む疎水構造を有するフタル酸エステル (BBP) は総溶出量が少なかった.
結論: ティッシュコンディショナーからのフタル酸エステルの溶出性はその化学構造に依存し, 浸潰媒体との相溶性に大きく影響を受けることが明らかとなった.

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