基礎理学療法学
Online ISSN : 2436-6382
総説
リハビリテーションと分子標的の併用による脳損傷後の機能回復
田中 貴士上野 将紀
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2022 年 25 巻 1 号 p. 43-49

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抄録

 脳損傷はしばしば重篤な運動機能障害を引き起こし,自立した社会生活を困難にする。傷害された神経回路の再編は機能回復に重要であるが,成体の中枢神経における再編能力は限定的である。脳損傷後において,神経分子を標的とした治療やリハビリテーション等,様々なアプローチが試行されてきたが,未だ十分な機能回復は達成されていない。したがって,再編と機能回復を強化する新しいコンセプトの治療法が求められている。例えば我々は,神経軸索の伸長を阻害しているチロシン脱リン酸化酵素(src homology 2-containing phosphatase-1:以下,SHP-1)に着目し,遺伝学的なSHP-1 の欠損と自発的運動の併用が脳損傷モデルマウスの神経回路の再編や機能回復を相乗的に高めることを報告してきた。本稿では,中枢神経損傷のモデル動物における神経回路の再編についての知見を整理し,リハビリテーションや分子標的がもたらす再編や機能回復への効果とその機序について概説する。

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© 2022 日本基礎理学療法学会
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