抄録
【はじめに】 現在、重度脳性麻痺者の加齢に伴う2次障害が問題となっている。脳性麻痺者は筋緊張、姿勢反射の異常により四肢関節・脊柱の変形を伴い多様な障害像を示す。筋緊張の異常や脊椎の変形は呼吸機能に対しても影響を及ぼすことが予想され、また呼吸機能低下は、運動能力の低下のみならず疾病を誘発する恐れがあることは周知の事実である。以上のことから脳性麻痺の呼吸機能を把握することは重要なことであるが、本施設のような社会福祉施設においては医療的な環境が不十分であり、測定は困難を極め正確かつ簡便な測定方法の確立は必須である。 今回の研究は、施設のような現場においても簡便に呼吸機能を評価検討していく方法を確立するための基礎データー収集を目的として実施した。【対象と方法】 対象は北海道立福祉村に入所する成人脳性麻痺者100名である(平均年齢39.23±9.12歳)。対象に関して、基本属性、呼吸機能、ADLの情報を得た。呼吸機能は、1回換気量(Tidal Volume;TV)、肺活量(Vital Capacity;VC)を流量計にて測定し、1分間の観察によって呼吸数を数え、分時換気量(Minute Ventilation;V(dot)E)、%VC、TV/体重を算出した。また、夜間睡眠時の動脈血酸素飽和度(SpO2)をTEIJIN社製PALSOX-24にて測定した。ADLは、FIM運動項目に準じて調査を行った。統計処理は性別、年齢、FIM点数、移動手段の4点に着目して、年齢に関してはKruskal-Wallis検定、それ以外に関してはMann-WhitneyのU検定を用い、有意水準5%で比較した。 【結果】 VEは、8.77±2.89L、%VCは、51.10±22.31%、TV/体重は9.25±3.61ml/Kgであった。FIM点数は平均62.37±23.90(91点満点)であり、低値と高値の2群に分かれる傾向が見られた。夜間の平均SpO2は、100名中62名測定し、96.19±1.37%であった。20代群と50代以上群では、V(dot)Eと%VCに有意差がみられた。移動手段では、車いす介助・電動車いす群と車いす自走・歩行群では有意差のある項目はなかった。【考察】 対象のほぼ全員が拘束性換気障害を呈するという結果となったが、現疾患の特性上、自力強制呼出が困難なことが原因と考えられた。またVEや夜間SpO2からは著しい呼吸機能の低下はみられなかったが、これは呼吸機能の低下した者の入所自体が困難なことが一因と推察された。ADLではFIM低値群と高値群においてのみ%VCに有意差がみられたが、今後はFIM運動項目以外にも生育歴や生活環境、余暇活動なども含めた生活全体の把握が必要と考えられた。