2024 年 27 巻 1 号 p. 52-61
体性感覚の知覚には,脳内において非常に複雑な処理が要求される。知覚には,中心後回に位置する一次体性感覚野が密接に関与することが周知の事実である。近年,脳イメージング装置と脳機能解析技術の飛躍的な進歩により,体性感覚処理には一次体性感覚野だけでなく,複数の脳領域が共同的に関与することが明らかになっている。我々の研究グループでは,体性感覚処理の二点識別覚に着目し,この処理には複数の大脳皮質領域が関与することを機能的かつ構造的な視点から明らかにした。本総説では,これらの研究に基づき,二点識別覚に関与する特定の大脳皮質領域について解説する。次に,我々が取り組む体性感覚機能の強化を目的とした非侵襲的脳刺激における最新の知見と課題に言及する。また,上記の我々の脳イメージング研究に基づいた非侵襲的脳刺激戦略についても紹介し,脳卒中後の体性感覚障害を対象としたリハビリテーション応用への可能性を模索する。