論文ID: JJPTF_2023-S04
私たちは,日常生活の中で,目の前のコップをつかむ時などに,無意識のうちに使う上肢の選択を行っている。脳卒中後に生じる片側上肢の麻痺は,リハビリテーションによって,ある程度の機能が回復する。一方で,麻痺上肢の機能が回復しても,日常生活などの麻痺上肢の使用を強制されない状況では,非麻痺上肢で代償し,麻痺上肢を使わなくなってしまうことがある。この麻痺上肢の不使用は,麻痺上肢の機能を低下させる要因となる。このため,麻痺上肢の使用を強制されない状況でも,無意識のうちに麻痺上肢を使わせるような介入を提案することが重要となる。我々は,上肢の選択に関する神経メカニズムに着目し,上肢の選択に影響を及ぼすニューロモジュレーション法について検討してきた。本稿では,上肢の選択に関する決定要因についてまとめ,後頭頂葉への経頭蓋直流電気刺激が上肢の選択に及ぼす影響に関する研究成果について紹介する。