1998 年 17 巻 1 号 p. 23-30
ショックや痙攣等において生ずる神経細胞の過剰興奮や膜脱分極は細胞内pH低下を誘起する。この細胞内環境の酸性化には, 細胞内外のイオンバランスの変化に伴う種々のイオン輸送系からなる細胞内pH調節機構とともに, 解糖系亢進による乳酸生成が関与している。一方, アシドーシスはCa2+チャネルやNMDA受容体の活性を抑え, 興奮性シナプス伝達等の神経細胞機能を抑制することから, 過度の興奮を抑えて神経細胞を保護する可能性が示唆される。しかし, 高度なアシドーシスは細胞を傷害することも知られている。このような神経細胞の過剰興奮や膜脱分極によって変化する細胞の酸塩基環境について, その機序と生理学的意義を検討した。