抄録
アデノシン三リン酸 (ATP) による低血圧麻酔が心筋虚血再灌流障害に及ぼす影響を, 循環動態の変動と心筋梗塞サイズを指標に検討した。ウサギを全身麻酔下に開胸し, 左冠状動脈前下行枝の結紮による30分の虚血と180分の再灌流を行った。動物はATPを投与した群と無投与群に分類した。研究中は連続的に循環動態をモニターし, ATPは虚血30分前から再灌流終了まで静脈内投与し, 収縮血圧が対照値の約80%になるように調節した。実験終了後には虚血域のサイズ (area at risk) を評価し, tetrazoliumの染色により心筋梗塞サイズ (infarct size) を算出した。左室に対するareaatriskは各群で有意な差はなかった。infarctsizeは無投与群に比較してATP群では有意に縮小した。ATPによる低血圧は心筋虚血再灌流障害を増悪させることはなく, 心筋に保護的に作用する可能性が示唆された。