日本鼻科学会会誌
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原著
視力障害を来たした後副鼻腔浸潤型真菌症例
唐木 將行秋山 貢佐米崎 雅史森 望
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2012 年 51 巻 1 号 p. 15-23

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抄録

後副鼻腔群は眼窩先端部や頭蓋底部と近接し,視力障害や頭蓋内合併症の観点から迅速な診断と治療が必要とされる。また,浸潤型真菌症は重篤な症状を呈して時に致死的な状況となるため早急な診断と治療が必要とされる。
今回我々は鼻症状を自覚せず,視力障害から画像検査を行い,副鼻腔陰影を指摘され耳鼻科を紹介された後に,診断および治療を行った後副鼻腔群真菌症の3症例を経験した。
一般に副鼻腔炎症は何らかの鼻副鼻腔症状を有するが,今回の3症例はほとんど鼻副鼻腔症状の自覚が無く,重度の視力障害や失明に至るまで診断に至らなかった。重度の視力障害を来した後に治療が開始されたため,視力予後は極めて不良であった。真菌感染の指標とされるβ-D-グルカン値は3症例とも上昇を認めず,このβ-D-グルカン値の低値も診断の遅れの一因と考えられた。
今回の3症例について,軽度の視力障害の自覚から診断に至る期間の診断の過程についての問題点,特に,診断の遅れと視力予後,詳細な画像診断の重要性,真菌感染におけるβ-D-グルカン値の診断的価値について若干の文献的考察を加えて検討する。

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