抄録
鼻副鼻腔神経鞘腫は頭頸部原発のうち約1%と稀である。今回我々は鼻副鼻腔原発神経鞘腫の3例を経験したので報告する。症例1:59歳女性。右鼻閉を主訴に近医を受診し右鼻ポリープの生検で神経鞘腫と診断され紹介となった。鼻中隔に基部を有する表面平滑な腫瘤を認め,副鼻腔CTで鼻中隔の骨破壊はなかった。内視鏡下に経鼻的に腫瘍を摘出した。病理標本では神経鞘腫Antoni A型の診断であった。症例2:72歳女性。人間ドックで行った頭部MRIで右篩骨洞内の腫瘤を指摘され当科を受診した。副鼻腔CTで右前篩骨洞に占拠性病変を認め,右眼窩内側壁の骨欠損を認めた。内視鏡下に腫瘍を切除した。病理診断は神経鞘腫Antoni A型であった。症例3:34歳女性。右鼻閉を主訴に近医を受診し,右総鼻道に充満するポリープ状の腫瘍性病変を認められ紹介となった。副鼻腔CTでは右鼻腔,上顎洞,前頭洞,篩骨洞に軟部陰影を認めた。生検で神経鞘腫の診断であった。内視鏡下に鼻腔腫瘍切除術を行い,鼻中隔前上方に腫瘍基部を確認した。病理標本で神経鞘腫Antoni A, B混合型と診断された。3症例いずれも現在まで再発を認めず,内視鏡下鼻内手術で腫瘍を完全切除できたと考えられた。