日本鼻科学会会誌
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原著
慢性副鼻腔炎による嗅覚障害に対する内視鏡下副鼻腔手術の治療効果
都築 建三児島 雄介雪辰 依子岡 秀樹竹林 宏記阪上 雅史
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2014 年 53 巻 4 号 p. 522-527

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抄録

当科で経験した慢性副鼻腔炎による嗅覚障害の手術症例の治療成績を検討した。2007年1月から2013年2月の間に,嗅覚障害を認めた両側慢性副鼻腔炎に対して初回の両側内視鏡下副鼻腔手術を行った症例の中で,術後に嗅覚評価できた109症例を対象とした。男性60例,女性49例,年齢中央値50歳(20~79歳)。術後観察期間は中央値12か月(3~79か月)であった。嗅覚障害は,T&Tオルファクトメーターを使用した基準嗅力検査および静脈性嗅覚検査で評価した。基準嗅力検査の平均認知域値の結果から治療効果を判定し,治癒と軽快を合わせた改善率を求めた。術後の嗅覚変化はレトロスペクティブに改善維持,緩徐改善,緩徐増悪,不変の4つの経過に分けた。時系列別の改善率は術後6か月未満が66%(40/61例)で最も高く,その後は経過とともに低下した。術後に嗅覚検査を複数回行えた58例における嗅覚変化は,改善維持が50%(29例)と半数を占め,緩徐増悪14%(8例),緩徐改善7%(4例),不変29%(17例)となった。症例全体では,平均認知域値が術前4.9±1.4から術後3.9±1.7と有意に改善し(p<0.0001,n=109,Wilcoxon検定),治癒(24例)と軽快(33例)をあわせた改善率は52%(57/109例)であった。平均認知域値は,改善群2.6±1.3(n=57),不変群5.2±0.9(n=52)であった。術前の静脈性嗅覚検査の陽性率は,不変群が79%(41例)であったのに対し,改善群は95%(54例)と有意に良好(p=0.020)であった。

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