日本鼻科学会会誌
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原著
Human papillomavirus(HPV)関連鼻副鼻腔癌の2症例
松山 敏之下田 雄輝井田 翔太近松 一朗
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2020 年 59 巻 4 号 p. 363-369

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抄録

鼻副鼻腔癌において中咽頭癌と同様にヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus: HPV)の関連性が指摘され,その評価の必要性が言われている。今回,我々はHPV33型を検出した鼻腔扁平上皮癌とHPV56型を検出したHPV-related multiphenotypic sinonasal carcinoma(HMSC)の症例を経験した。症例1は67歳男性。鼻出血を主訴に近医を受診し,左鼻腔に腫瘤を認めた。当科の精査にて鼻副鼻腔扁平上皮癌(T3N0M0)と診断され,手術にて腫瘍の完全摘出術を行った。術後の病理検査では非角化型扁平上皮癌の所見であった。免疫染色において腫瘍細胞はp16強陽性を示し,HPV33型が検出された。症例2は50歳男性。鼻出血を主訴に近医を受診し,左鼻腔に腫瘤を認めた。当科精査にて鼻副鼻腔癌(T2N0M0)と診断され,手術にて腫瘍の完全摘出術を行った。術後の病理検査では何らかの唾液腺腫瘍を疑わせる多彩な分化を示す悪性腫瘍の所見で一部に扁平上皮への分化がみられた。腫瘍細胞はp16免疫染色で強陽性を示し,形態および免疫染色からHMSCが疑われた。HPV56型が検出され,HMSCと診断された。HPV陽性鼻副鼻腔扁平上皮腔癌では,HPV陰性よりも生存率が有意に高いことがわかっているが,化学療法の感受性やp16過剰発現との相関性はまだ評価されておらず,HPV関連癌の定義や臨床像についても確立されていない。また,HPV陽性鼻副鼻腔癌として扁平上皮異形成,ACC様の病理を呈するHMSCという疾患が新たに分類されている。今後,HPV陽性鼻副鼻腔癌について,さらなる症例数の蓄積が必要である。

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