日本鼻科学会会誌
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症例報告
診断に注意を要した歯性上顎洞炎合併の鼻副鼻腔内反性乳頭腫例
石神 瑛亮鈴木 慎也
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2023 年 62 巻 4 号 p. 625-630

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抄録

鼻副鼻腔内反性乳頭腫の治療はmargin studyを行い,適切な基部の処理を行って完全に切除する必要があり,術前に内反性乳頭腫を想定することが重要であるが,上顎洞内に限局する内反性乳頭腫の場合,術前診断が困難な場合もある。今回,歯性上顎洞炎に合併し,診断に注意を要した鼻副鼻腔内反性乳頭腫例を経験したので報告する。症例は62歳男性で,左歯性上顎洞炎に対して,当院口腔外科にて抜歯と上顎洞洗浄を施行されたが,副鼻腔CT検査で左上顎洞陰影の改善が乏しいため,当科に紹介となった。CTでは左上顎洞に限局した軟部陰影を認め,慢性炎症の遷延と考え,クラリスロマイシン,カルボシステイン投与による保存的治療を3ヵ月施行したが,その後のCTによる再評価では軽度改善がみられたが上顎洞陰影は残存していた。また,左上顎洞外側壁の限局的骨肥厚と軟部陰影の形状に着目し,内反性乳頭腫の存在を考慮したが,生検は困難な部位であった。さらに造影MRIで評価したところ脳回様構造を認めたため,CTの所見と合わせて内反性乳頭腫が疑われた。そのため全身麻酔下にendoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)を行い,内視鏡下に上顎洞に存在した腫瘍を摘出した。病理組織学的検査で内反性乳頭腫の診断であり,術後1年5ヵ月の時点で再発は認められていない。本症例のように歯性上顎洞炎と内反性乳頭腫を併発している場合があり,CTやMRIによる画像検査を行うとともに,常に他の疾患を併発している可能性を考えて診療にあたる必要がある。上顎洞内に限局する乳頭腫の場合,術前の生検が困難な場合もあり,CT,MRIは術前評価に重要である。

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