日本鼻科学会会誌
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症例報告
内視鏡下経鼻下垂体手術における術中内頸動脈損傷の2例
藤本 康倫西池 季隆影山 悠馬塲 庸平一瀬 綾花
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2023 年 62 巻 4 号 p. 631-636

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抄録

内視鏡下経鼻手術による再発下垂体腫瘍摘出時に内頸動脈損傷を生じた2例を経験したので報告する。症例1:60歳代女性。左海綿静脈洞部内頸動脈からの出血に対し,綿片による圧迫での一時止血の後フィブリノーゲン液を浸した酸化セルロースを挿入し補強した。術後仮性動脈瘤を認めバルーン閉塞試験により虚血耐性は境界域と判断されたため左内頸動脈コイル塞栓術及び左浅側頭動脈–中大脳動脈バイパス術を施行した。症例2:80歳代男性。右海綿静脈洞部内頸動脈からの出血に対し,綿片による圧迫後大腿から採取した挫滅筋肉片を用いて止血した。術後仮性動脈瘤を認めバルーン閉塞試験により虚血耐性ありと判断されたため,右内頸動脈コイル塞栓術を施行した。2症例ともに新たな神経学的合併症なく自宅退院した。内視鏡下経鼻手術中の内頸動脈損傷は,まず綿片によるポイント圧迫で出血を抑え,引き続き挫滅筋肉片を用いて圧迫止血を行うことでコントロール可能と考えられた。出血部位に発生する仮性動脈瘤に対しては脳の虚血耐性を考慮した上で速やかにコイル塞栓術による内頸動脈血流遮断を行う必要があり,耳鼻咽喉科医,脳神経外科医,麻酔科医,看護スタッフなど各診療部門間のスムースな連携が重要である。

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