日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
症例報告
眼窩内嚢胞を伴った前頭洞の骨形成性線維腫例
吉田 晴郎吉田 光一北岡 杏子木原 千春黒濱 大和熊井 良彦松尾 孝之
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 62 巻 4 号 p. 651-657

詳細
抄録

骨形成性線維腫(OF: Ossifying fibroma)は,線維性骨異形成症とともに線維性骨病変に分類される良性腫瘍である。今回,副鼻腔領域の中でも稀な前頭洞のOF症例を経験した。症例は45歳女性で,右前額部から右眼にかけて発赤および腫脹を認め,眼球は大きく前下方に偏位し複視を伴っていた。副鼻腔単純CTでは,右前頭洞内にまだら状の石灰化を伴う腫瘤性病変があり,前頭洞の外側から眼窩内に伸展する嚢胞性病変を伴っていた。前頭蓋底手術を考慮した上での全摘術は同意されず,生検による診断確定後に,整容面と嚢胞の位置を考慮して側頭部から前頭洞外側の骨を削除し嚢胞の開放を行った。現在,術後2年以上経過しているが,OF病変の増大傾向はみられず,眼症状の再燃や感染も認めていない。

OFに確立された治療指針はなく,特に今回のような前頭洞の症例では,整容面の問題に加え,前頭蓋底や眼窩壁などにより手術操作が制限され,切除範囲には難渋することが多い。一方で,増大傾向がない症例では慎重な経過観察も選択枝になるため,完全切除できる部位と大きさであるかを判断することが最も重要と考えられる。そのためにも,OFを含む線維性骨病変の特徴をよく理解し,複数の科と連携し,アプローチ法,手術に伴う侵襲性,増大時に予想されるリスク等を考慮し,患者ごとに最適な治療方針を立てる必要があると考えられた。

著者関連情報
© 2023 日本鼻科学会
前の記事
feedback
Top