日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
看護研究報告
人工呼吸器装着患者の在宅療養継続を支える要因を考える
──患者を支える家族の心情を考慮して──
水田 千尋中川 由紀子加藤 久美子成田 欣史斎藤 司森 雅樹
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 53 巻 4 号 p. 685-691

詳細
抄録

 肺結核後遺症による慢性呼吸不全のため人工呼吸器を装着した患者が, 在宅療養と短期入退院を繰り返し, 約2年が経過した。在宅療養は家族にとって患者と共に生活を出来る反面, 心身の負担が生じ,継続の可否は家族支援にある。本症例においては, 患者と家族共に医療者不在の在宅療養に対して不安が大きく, 前向きに取り組むことのできる心理状態ではなかった。また, 当病棟において人工呼吸器装着患者の在宅移行への取り組みは初めての試みであった。しかし, 妻の「夫と共に家で暮らしたい」という思いと医療チーム間の在宅療養に向けた目標の共有により, 在宅療養への移行が可能となった。現在では, 不安を抱えていた患者も在宅生活を送り, 夫として父親として社会的役割を果たしながら自宅で生き生きとした充実した生活を送っている。今回, 在宅療養に向けた物理, 環境的準備と患者, 家族を取り巻く背景を明らかにし, 支援者の心情変化を加味して有効な在宅療養支援体制を分析, 検討した。その結果, 在宅療養の継続には患者, 家族に医療者の具体的支援内容が明示されていること, 患者の体調の変化時には適切で早急な対応がなされること, 患者と家族の心身の休養が確保されていること, そして何よりも, その家族らしい生活を再構築していく家族関係が築かれていることが重要であると明らかになった。

著者関連情報
© 2004 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top