日本農村医学会雑誌
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53 巻, 4 号
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論説
  • 藤井 康宏
    2004 年 53 巻 4 号 p. 631-640
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     It is said that medical care is a social application of medicine to the benefit of community or individual. In step with progress in medicine, medical care has been made all the more complicated. Moreover, the system supporting medical care has fallen behind the times when its surroundings have been changing drastically. This situation could be ascribed to the institutional fatigue that the system itself is suffering from after a long period of existence. It also can be pointed out that there have been revolutionary changes in traditional Japanese cultural values together with the awareness of people concering health. However, the primary factor that lies behind need of reform is financial difficulties.
    At present, in connection with deregulation of medical care, the introduction of mixed medical care and the entry of joint-stock corporations are taken up for discussion as topics of the day. In the meantime heated debates are being held over the subjects of institutional reform including the setting up of medical care for the aged as part of the fee-for-service system and reconstruction of the network of providers of health care and services. Moreover, the institutions that are engaged in the practice of medicine are expected to tackle a broad range of tasks- -catching up with ever-progressing information technology, disclosure of information, and strengthening of safety measures against medical accients, among many others.
    However, these are not the issues which have cropped up in recent years. Many have been brought up and discussed from an angle a little different from what it is today. It is now high time for us to discuss these issues through and through in light of actual situations while looking back on the history of medical care and its system.
    In this paper the author shall dwell on the development of the nation's medical system and point out some problems confronting us today with the use of some materials thus far presented by the Japan Medical Association. His view is based on his personal experience in hospital management and with the Japan Medical Association.
原著
  • 大西 丈二, 益田 雄一郎, 鈴木 裕介, 石川 美由紀, 近藤 高明, 井口 昭久
    2004 年 53 巻 4 号 p. 641-648
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     加齢に伴いこれまで担ってきた家庭的・社会的役割を喪失することの多い高齢者では,活動性が低下しやすく,時に身体的・精神的機能低下を引き起こしてしまうこともある。地域で行われる余暇活動の開発は高齢者の活動性やQuality of Life (QOL) の維持・向上に役立つものと思われるが,こうした余暇活動の効果はまだあまり実証されていない。今回われわれは農村部に居住する424名の高齢住民 (平均年齢71.6±4.8SD歳) を対象に,余暇活動を楽しむことと幸福感等との関連を明らかにするため調査を行った。調査項目として生活環境や,日常生活動作 (ADL) などの身体状況,外出の頻度,余暇活動を楽しいと感じる程度およびPGC主観的幸福感を含めた。この結果,楽しいと思う活動は「入浴」,「食事」,「テレビ」の順であった。余暇活動の中では「食事」や「入浴」を楽しむことがPGC主観的幸福感と正の関連を持ち,逆に「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむことは負の関連を示した。「動物の相手」を楽しむ者は閉じこもりが少なかった。PGC主観的幸福感を従属変数とする回帰分析では,人間関係の悩み,「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむこと,基本的ADL,体の痛み,独居を予測値とした有意なモデルが構築された。これらの結果は今後地域で高齢者の余暇活動を促進していくにあたり,有用な知見を与えた。
  • 乃木 章子, 塩飽 邦憲, 北島 桂子, 山崎 雅之, エルデンビレグ アヌーラド, エンヘマー ビャンバ, 米山 敏美, 橋本 道男, 木 ...
    2004 年 53 巻 4 号 p. 649-659
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     農村地域で肥満, インスリン抵抗性, 脂質異常, 高血圧を合併した代謝症候群が増加している。代謝症候群に対しては体重減少が有効とされているが, 白人と日本人では肥満と代謝症候群の関係に差異が見られる。日本人での体重減少と生活習慣変容, 体重減少と代謝症候群の改善についての実証的な研究は少ないため, 体重減少に寄与する要因, 体重減少と代謝症候群改善との関係を研究した。2000~2003年に健康教育介入による3か月間の肥満改善プログラムに参加した住民188名を対象とした。参加者の平均体重減少は1.3kgであり, BMI, ウエスト囲, 血圧,総コレステロール, LDLコレステロール, 中性脂肪の減少, HDLコレステロールの増加を認めた。相関および回帰分析により, 摂取熱量減少, 消費熱量増加が体重減少に寄与していることが明らかになった。一方, 体重変化との有意な相関が認められたのは, 各種肥満指標, 総コレステロール, 中性脂肪, HDLコレステロールであり, 血圧とLDLコレステロールでは有意な相関を認めなかった。体重変化量と有意な相関が認められた血液生化学的検査値の変化量との相関係数は比較的低く, 体重変化量は中性脂肪や総コレステロールの変動の10%以下しか説明しなかった。代謝症候群の改善における体重減少の有効性について, アジア人の民族差に着目した体重減少の有効性に関する実証的な研究が重要と考えられる。
  • ──クレゾール中毒患者の臨床経験を通じて考える──
    大林 浩幸, 西尾 政則, 安藤 操, 吉田 正樹, 野坂 博行, 山瀬 裕彦
    2004 年 53 巻 4 号 p. 660-665
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     今回我々は, 使い切れず自宅にあった500mlボトル入りのクレゾール石鹸液残液を自殺企図にて服用した, うつ病患者を経験し, 日常的に一般家庭向けに販売されているクレゾール石鹸液の在り方に疑問を感じたので調査した。
     岐阜県東濃地区4市(瑞浪市・土岐市・多治見市・恵那市)の全一般薬局・薬店128店における, クレゾール石鹸液の販売・在庫状況を電話調査した。
     調剤のみを扱う薬局を除いた一般薬局・薬店では, その約8割がクレゾール石鹸液を販売していた。販売している薬局では, 成人の推定致死量250mlを上回る500mlボトルが平均2本以上販売されていた。
     一般家庭の用途で500mlボトルを一度に使い切ることは通常稀であり, 使用後に自宅に置かれる残液が中毒事故などの原因となる可能性があり, 500mlボトルの一般への販売は望ましくないと考える。また, 販売時には専門知識を持つ薬剤師が, 使用者に直接対面し, その毒性や取り扱い方を十分に指導する必要がある。
報告
  • 永井 信, 中屋 俊介, 櫻庭 光夫, 飯田 健一, 今村 哲理, 須賀 俊博
    2004 年 53 巻 4 号 p. 666-672
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     当院健診センターは平成10年度より, 胃バリウム検査に加えて希望者を対象とした血清ペプシノゲン値の測定を開始した。過去5年間の併用法発見胃癌数は94例であり, 平均胃癌検出率はバリウム法で79.8%, ペプシノゲン法で71.3%となり, バリウム法が高かった。一方, 両検査法が陽性を示したものは51.1%, バリウム法のみ陽性癌は28.7%, バリウム法陰性でPG法のみ陽性癌は20.2%であり約半数の48.9%がどちらか一方で拾い上げられていたことから, 両法は相補的な関係にあると思われ, 併用法の有用性が再確認できた。PGレベル区分の検討では陽性反応的中率でレベル2以上, 経年変化で特に陰性からレベル2, 4への移行群で高く, より高危険群の設定が可能と思われた。
  • 栗原 かおる, 花岡 利安, 佐藤 美智子, 久保田 道子, 土屋 匡, 水上 弘史
    2004 年 53 巻 4 号 p. 673-678
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     1979年より当院で行ってきた訪問リハ指導の経過をふまえ, 2000年に施行された介護保険後の動向を調査した。
     訪問リハ指導では, 関連する諸機関との連携が必要であり, 介護保険施行前に築いてきたネットワークの再編成が必要とされている。
     介護保険施行後, ケアマネジャーとの連携強化をはかりながら, 各訪問リハ指導の役割を形成しつつある。その中で自治体の関与が薄くなる傾向は否めないが, 今まで培ってきた病院と自治体との連携も維持し, 新しい地域連携を構築していきたい。
  • 齊木 泰宏, 平沢 文江, 阿部 辰夫, 江口 和夫, 深沢 英雄, 角田 博信
    2004 年 53 巻 4 号 p. 679-684
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     愛知県厚生連愛北病院では2003年5月のオーダリングシステム導入に伴い, バーコード対応の簡易血糖測定器プレシジョンPCxおよび測定結果を自動管理できるQCマネージャーを使用し, 簡易血糖に対応できるようシステムを構築した。簡易血糖測定をバーコード管理し, 測定結果を自動で検査システムデータベースに転送することで患者の取り違いや転記ミスを軽減し, 院内における血糖測定データを集中管理できるシステムとなった。
看護研究報告
  • ──患者を支える家族の心情を考慮して──
    水田 千尋, 中川 由紀子, 加藤 久美子, 成田 欣史, 斎藤 司, 森 雅樹
    2004 年 53 巻 4 号 p. 685-691
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/30
    ジャーナル フリー
     肺結核後遺症による慢性呼吸不全のため人工呼吸器を装着した患者が, 在宅療養と短期入退院を繰り返し, 約2年が経過した。在宅療養は家族にとって患者と共に生活を出来る反面, 心身の負担が生じ,継続の可否は家族支援にある。本症例においては, 患者と家族共に医療者不在の在宅療養に対して不安が大きく, 前向きに取り組むことのできる心理状態ではなかった。また, 当病棟において人工呼吸器装着患者の在宅移行への取り組みは初めての試みであった。しかし, 妻の「夫と共に家で暮らしたい」という思いと医療チーム間の在宅療養に向けた目標の共有により, 在宅療養への移行が可能となった。現在では, 不安を抱えていた患者も在宅生活を送り, 夫として父親として社会的役割を果たしながら自宅で生き生きとした充実した生活を送っている。今回, 在宅療養に向けた物理, 環境的準備と患者, 家族を取り巻く背景を明らかにし, 支援者の心情変化を加味して有効な在宅療養支援体制を分析, 検討した。その結果, 在宅療養の継続には患者, 家族に医療者の具体的支援内容が明示されていること, 患者の体調の変化時には適切で早急な対応がなされること, 患者と家族の心身の休養が確保されていること, そして何よりも, その家族らしい生活を再構築していく家族関係が築かれていることが重要であると明らかになった。
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