日本農村医学会雑誌
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綜説
日本におけるHIV感染症/エイズの現況
内海 眞
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2006 年 54 巻 5 号 p. 723-733

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抄録
 我が国のHIV感染症患者の累計は,2005年7月3日現在11,664人となったが,実際はこの数倍の感染症患者が存在すると推定されている。新規HIV感染症患者数も年々増加し,2004年1年間には過去最高の1,165人が報告された。日本のHIV感染は拡大している現状にある。以前,感染は首都圏中心であったが,現在は地方にも波及している。感染経路別では,全報告総数においては異性間性的接触によるものが最も多いが,近年は男性同性間の感染が多くなっている。世界のHIV感染の歴史を見ると感染の拡大は急速であることから,感染拡大の要因がいくつか存在する日本においても有効な感染予防対策の実施が急務である。しかし,我が国においては未だHIV感染症/エイズに関する正確な情報が人々の間に行き渡ってはおらず,予防対策を有効に進める上でも我々医療者は情報提供に努めなければならない。HIV感染症はエイズになる前の比較的早期に診断されれば,抗HIV薬により十分コントロールできる慢性疾患の一つに変貌した。従って,HIV検査による早期診断の価値は以前にも増して高くなった。検査を受けやすくする体制作りは治療の観点のみならず,予防の観点からも重要である。なぜなら,HIV感染を知ることによってセクシャルライフの改善が期待されるからである。HIVの感染拡大を阻止するために,我々医療者に課せられた課題は多い。
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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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