日本農村医学会雑誌
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看護研究報告
在宅家族介護者の介護負担感とそれに関連するQOL要因
宮下 光子酒井 真理子飯塚 弘美町田 玲子中村 光江横井 由美子新谷 周三椎貝 達夫戸村 成男
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2006 年 54 巻 5 号 p. 767-773

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抄録
 介護保険制度創設のねらいとして「介護の社会化」が掲げられているが,重度要介護者の在宅介護においては,今なお,家族介護者の果たす役割は大きく,家族介護者の献身的な役割意識に支えられていると考える。今回私達は,在宅家族介護の実態と,介護負担感に関連するQuality of Life(QOL)要因を明らかにするため,当居宅支援事業所利用者の主介護者に対し,調査を行なった。これまで,介護負担感に関する研究は多くあるが,介護負担感に関連するQOL要因をQOLの領域別に分析した報告はなかった。調査項目は,主介護者の基本情報,要介護者の基本情報,WHO/QOL-26調査票,介護負担感調査票とした。調査の結果,介護期間6か月未満と5年以上の介護者が負担感を強く感じていた,また,要介護者の認知症が重度になると介護負担感が強くなる傾向であった。介護負担感に関連するQOL要因は,痛みや不快,睡眠と休養,活力と疲労感などの身体的QOL要因であることが明らかとなった。また,介護に関する新しい情報や技術の習得,住宅環境などの環境的QOL要因は,身体的QOLを高める関連要因であることが明らかになった。心理・社会的QOL要因は,介護負担感と有意な関連性がみられなかったが,これは,調査対象者の居住地域が,農村部を含む地方都市であり,主介護者に対する親族の支援が比較的得られていたこと,調査対象者の多くが高齢の女性であり,介護に対する役割意識・義務感とこれらに関連する地域の特性が心理・社会的QOL要因に影響したことによると推測する。以上の結果は,在宅家族介護者を支援するために有用な示唆であると考える。
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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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