日本農村医学会雑誌
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ドクターヘリコプターによる救急搬送の検討
白井 大悟
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2008 年 57 巻 2 号 p. 66-70

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抄録

 国民健康保険川上村診療所のある川上村は長野県の最東端に位置し,群馬,埼玉,山梨県との県境を有する人口約4,700人の村である。医療機関は当診療所と,木村医院分院の2か所で,共に無床である。救急車搬送は後方病院のJA長野厚生連佐久総合病院 (以下佐久病院) まで約35kmを搬送する。2005年7月,長野県にドクターヘリコプター (以下ドクターヘリ) が就航した。2005年7月から2006年12月までにドクターヘリの運行が可能な時間帯の病院間搬送75例を対象とした。そして救急搬送における重症度・緊急度判定基準委員会報告書に基づき搬送の形態別に時期,疾患内容,重症度を検討した。全症例のうち17例はドクターヘリを利用し,全体の23%であった。時期別では前半9か月間では全体の19%,後半9か月間では26%であった。疾患内容別では内科系疾患76%,外科系疾患24%であり,重症度別では軽症12%,中等症41%,重症29%,重篤18%であった。転帰は1例が3日後に死亡し,その他は2か月以内に退院か転院した。ドクターヘリの利用率は低く,搬送手段として定着したとはいえない。また外科系疾患はドクターヘリで搬送すべきか否かの判断が難しかった。救急隊,後方病院と適応を検討していくとともに,primary careとしてのさらなる救急医療の能力が必要である。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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