日本農村医学会雑誌
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症例報告
膝複合靭帯損傷における, 前及び後十字靱帯同時再建術後の理学療法
櫻田 圭介嶋田 誠司岸野 美代子佐藤 嘉寿袴田 佳奈恵三浦 利哉
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2008 年 57 巻 2 号 p. 75-82

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抄録

 膝複合靭帯損傷により,前十字靱帯 (anterior cruciate ligament: ACL) 及び後十字靱帯 (posterior cruciate ligament: PCL) 同時再建術を施行された1症例に対し理学療法を行なった。
 術後プログラムは,1996年の遠山の報告を基にし,さらに当院のACL及びPCL単独損傷後における各術後プログラムを組み合わせ作成し,理学療法 (physical therapy: PT) を行なった。
〔結果〕術後4か月で膝可動域 (range of motion: ROM) は正常となった。術後16か月で,膝不安定性は認めず,筋力はピークトルク・180°/sec・患健比で大腿四頭筋 (quadriceps femoris: Quad) は87%,ハムストリングス (hamstrings: Ham) は103%,膝運動能力は下肢機能的運動能力テスト (functional ability test: FAT) で4種目全てが良好となった。
 ACL及びPCL同時再建術後PTのポイントは,以下の3つである。第1に,再建靭帯 (特にPCL) の最低限の成熟が期待できる時期まで,ACL及びPCLのストレスを最小限に抑えるため,Quad・Hamの同時収縮を中心とした筋力強化を膝軽度屈曲位で行なうこと,また,Hamの単独収縮を避けることである。第2に,膝拘縮により授動術を要する可能性が高いため,主治医と膝ROMの回復経過について密に連絡をとることである。第3に,膝運動能力向上のために,協調性トレーニングを十分に行なうことである。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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