日本農村医学会雑誌
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原著
認知症高齢者の長期在宅療養を可能にする条件
宮原 伸二山下 幸恵塚原 貴子
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2011 年 60 巻 4 号 p. 507-515

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抄録

〔はじめに〕中重度認知症の高齢者が在宅で療養をするにはどのようなケアや条件が必要になるのかを,6か月以上在宅療養 (以後長期在宅療養) を行なった事例に対してアンケート調査を行ない多面的に検討したので報告する。
〔調査対象〕対象者は長期在宅療養継続者37事例,長期在宅療養後に施設入所した者60事例の計97事例 (男31人,女66人) である。平均年齢は85.6歳,平均在宅療養期間は48.9か月である。調査のまとめと解析にあたっては対象者全体でまとめるとともに,項目によっては在宅療養継続者と在宅療養後施設に入所した者とを分けてまとめた。
〔結果〕対象者には重度認知症が多く,周辺症状は3つ以上見られる人が73%見られたが,これらが長期在宅療養の弊害にはなっていなかった。長期在宅療養後に入所になるのは状態の急変,介護負担の増加などが要因であった。長期在宅療養を可能にするには,専従に近い介護者がいること,介護者の熱意や介護知識・技術が高いこと,また,介護保険のサービスの利用数が多い (特に通所サービス,ショートステイ,訪問看護などの利用回数),さらに,医師やケアマネジャーの在宅療養を支えるという熱意が重要な要件になっていた。
〔考察〕在宅で長期療養を支えるためには,介護者の確保,介護者の介護知識や技術の向上,中重度認知症に対応する通所介護・リハビリテーション,ショートステイ,訪問看護などのサービスの積極的な利用,また,在宅支援に熱心な主治医やケアマネジャーの存在,地域連携パスの整備が必要であり,これらの条件が揃えば中重度認知症の人でも在宅療養は可能になるだろう。

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