2015 年 64 巻 1 号 p. 8-13
2002年から2011年までに当院外科で経験した5例の男性乳癌について, その臨床病理学的検討を行なった。臨床所見としては, 発生頻度が全乳癌の1.59%と低く, 平均年齢が70.4歳で, 高齢者に多くみられた。また, 腫瘤占居部位は全例で乳輪下部領域であり, 主訴は腫瘤触知および乳頭分泌物であった。病悩期間は短期間の症例から10年以上に及ぶ症例まで, ばらつきがみられた。また, 画像診断能の向上などにより比較的早い段階での発見も多くなり, 術式では主に胸筋温存乳房切除術が行なわれている。病理組織学的所見では, 組織型は乳頭腺管癌が2例, 充実腺管癌が2例, 硬癌1例であった。乳頭腺管癌のうち1例は, 神経内分泌癌 (WHO分類2003) であった。癌巣は全例で乳腺外脂肪に及んでおり, うち4例では皮膚まで浸潤していた。リンパ節転移は40%にみられ, ホルモンレセプターの陽性率が高く, 内分泌療法が有用であった。分子標的治療の指標となるHuman Epidermal Growth Factor Receptor2 (HER2) 蛋白の発現はみられなかった。男性でも乳癌に罹患することから, 早期発見のために啓発する必要があると考えられる。